Not Yet ~あの映画の公開はいつですか?~

主に国内未公開&未発売の映画の話など

(補足記事)㊗「ゴッズ・オウン・カントリー」国内盤発売♡でもちょっと待って!?

紆余曲折を経て本国から遅れること1年半(!)この晩春に劇場公開された「ゴッズ・オウン・カントリー(God's Own Country)」。上映までの苦難の道のりについては本作に関する記事にまとめましたのでご興味あればご参照いただくとして、ついについに令和元年6月4日には、国内盤がリリースされました。

ある映画を気に入ったからと言って、必ずしも誰もがメディアを買ったりダウンロードを買ったりするわけではないと思いますが、この国内盤、豪華版は美しいスリーヴに入り、劇場パンフ掲載の監督インタビューを取り込んだミニ写真集、さらには生写真!!(「生写真」という単語とその強度を別の言語に訳すのがとても難しかった!ホントにサービス版写真が入っていたお友達の撮ったスナップの様に!)、と「豪華」の言葉を裏切らない内容ですので買って損はぜーんぜんありません(熱いダイマ)。

で、ディスクには特典映像が入っています。ひとつは日本オリジナルのアレク・セカレアヌさんの劇場用メッセージ。彼のお人柄が滲む駄々洩れるチャーミングな笑顔、ゲオルゲよりもっと上手で温かい英語が優しい声で聴ける超☆お宝映像です(断言)。これ多分スカイプか何かPCカメラで録画したものを使っていますので、この映像をあなたのPCで再生するともれなく死ねます。ヘッドフォンで観ても死ねます。耳は脳に近いですからね・・・。

 

※以下は国内盤を購入された方に向けた記事です。ネタバレとかそういうレベルじゃないのでご注意くださいませ※

今回の配給さんの超絶なお仕事ぶりを考えますと、指摘するのも気が引けるのですが・・・問題は、輸入盤でも観られる「削除・追加シーン」です。

言いたくないんですが・・・字幕が変なんです。もう笑わせに来ているとしか。特に野ウサギを捕えて食事の足しにするシーン。おいどうした!!?正気か?

 

追加シーンは本編でも見られるので、字幕の質の「違い」を確認出来るのですが、削除シーンはそうはいかない。

US版で輸入するとこの特典コンテンツには英語字幕が無いそうですし、国内盤も日本語字幕の有無しか選択できませんので、以下、自分の視聴メモから転載します。

※訳はもとより、台詞もUK版字幕+聴き取りメモなので完全一致はしてないと思います。あくまでご参考に※

ワタシの英語力ではあいにく毎度のざーっくりニュアンス訳しか出来ません。そしてそれはあくまで自分の脳内の勝手な時系列設定の上での訳に過ぎません。

まぁ(大体こんなことを言っているのか)程度にだけ把握していただき、台詞よりよっぽど多弁なふたりの表情や間を観ることをお勧めします。

照れながら無器用に、遠回しに分かりにくくゲオルゲを褒めるジョニー。その言い回しに当惑しながら、ジョニーの問いに自分のことをポツリと話すゲオルゲ。その表情。ぎこちなく交わされ、泳ぐ視線。それを観た感覚をまず堪能しましょう~。

ウサギ狩りは削除シーン故、時系列で何処に入るものなのか正解はありません。

あのシーンではまだふたりの心には距離があるように思えます。ワタシはトップフェル3日目夜設定だったのでは、と踏んでいます。

 

【トップフェル合宿 心象サマリー】

初日)イライラモヤモヤ(主にジョニーが)

2日目)発情からの「おりゃやってやるぜー!」からの泥だらけ。フゥ

3日目)夜はテレテレ...モジモジ(主にジョニー)からの「ナーイ」

4日目)(...タバコあげるね)からの夜♥

 

兎肉を美味しくいただいた後のシーンのジョニーは緊張や気まずさが少し緩んで、ゲオルゲにセックス以外の興味を向けています。彼の出自、サバイバル力。どこから来て、どこに行こうとする者なのか。

限られた道具で手際よく野ウサギを捕え、食料の足しにするゲオルゲ。でも4日目の昼にジョニーが見せるような、ゲオルゲへの素直な感服は未だそこにはない。”ボーイスカウトバッヂ(章)”のくだりは要は「どこでそんなの習ったんだよスゲエな」で、ジョニーなりに褒めているみたいだけれど、でも素直じゃないからまだちょっと噛み合わない。(牧場で育ったジョニーにしてみれば、引き合いに出したボーイスカウトのサバイバル”訓練”は揶揄の対象なのかもしれない。ゲオルゲにはそのニュアンスは伝わらなかったみたいだけど。)

メタファとしての食と焚火の炎がふたりのすぐそばに。

食事が済み、山の中では後は寝るだけ。交わされる視線。

そこで「そそるな」って!?んなこた言わないでしょ~?

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J「How much longer?」 
G「Shh...」 
J「Alright, I'm just askin'」 
G「Shh!」 
J&G「F*ck!」 
🐰🍴 
J「You sure you didn't get your "killing fluffy animals badge" in BoyScout?」 
G「Excuse me?」 
J「Excuse me for what, like?」 
G「My English sometimes...」 
J「It's bobbins」 
G「Pardon?」 
J「…」 
G「I learnt on the mountains at home」

J「Is there owt you didn't learn on't mountains?」 
G「For me, It's the best place in the world」 
J「How come you ended up here, then?」 
G「It's complicated...」 

J「...I'm flaggin' me」

(🐇捕獲後の意訳)

J「ボーイスカウトじゃ『ふわふわちゃん殺し』章は貰えないだろ?」 
G「え、何?」 
J「何って何がだよ」 
G「俺の英語は時々・・・」 
J「・・・大したことじゃねぇよ」 
G「え?」 
J「・・・」 
G「・・・故郷の山で全部学んだんだ」 
J「山以外では?」 
G「俺にとっては山がすべてだ」 
J「どうしてそこを出て来た?」 
G「・・・込み入っててね」 
👀🔥👀 

J「・・・疲れたぜ」

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このシーンが時系列でトップフェル3日目の夜に入ったかも、という仮説が成り立つと、「ゲオルゲの懐に子羊」「お塩の分け合い」「『Night...』」などが無かったかも?それは困るな~(嬉しい悲鳴)。

 

本作の記事にもちょっと書きましたが、ウサギを狩るというふたりの共同作業と、拙いながらも会話で理解を深めようとしたシーンをまるっと削除したことは、ジョニーがゲオルゲの黙々とした働きぶり、特にみなしごの子羊(=ジョニーの投影)に向ける愛情深く的確な扱いとで抱いた”尊敬”と、この土地を「美しいが、寂しい」と言えてしまうことへの”興味”をより強調する結果になっているのではないでしょうか。それにより、ゲオルゲに強く惹かれ、恋心を加速させるジョニーのその感覚、その過程がより際立つように思えます。もちろん会話を減らすことで映画全体が無口なトーンで進み、故にラストシーンの対話が引き立てられてもいるはず。

ううむ、削除シーンを観ないと出ない考察なので亜流な褒め方かもですが、フランシス・リー監督のこの編集センスには脱帽です。