Not Yet ~あの映画の公開はいつですか?~

主に国内未公開&未発売の映画の話など

「Center of My World(僕の世界の中心は/Die Mitte der Welt)」:僕は僕だから

2016年のドイツ映画「Die Mitte der Welt」です。2017年のレインボー・リール東京で「僕の世界の中心は」という直訳タイトルで上映されていたそうですが、今頃すみません。英ポンドが急落した夜にUK PAL版(英字幕)を購入しました。

「Center of My World」の画像検索結果 

ヒットした原作小説があり、その映画化のようですが、この作品もこのブログに頻出する「Coming-of-Age」ものです。もうパッケージにそう書いてしまってあるしw

 

あらすじ(ネタバレなし)--------------

フィルは双子の妹ダイアンとママのグラスの3人暮らし。自分の父親が誰かは知らない。奔放なママはまた新しいボーイフレンドを作っている。

親友のキットとは一見恋人同士みたいだけれど、フィルが自分がゲイだと自覚しているし、周りも理解している。

そんなフィルの前にニコラスという魅力的な転校生が登場する。すぐにふたりは仲良くなるが・・・

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--------------ここから先はネタバレ感想です※spoiler alert※

 

主人公の世界を変容されるのはまたも転校生。いちばんの仲良しは女の子。この時点で「彼の見つめる先に」を思い出しますね。

「僕の世界」を変えるためには必ずしも闖入者は必須でないはずですが、閉じた主役が内省に終始する物語より闖入者がかき回してゆく方が当然展開は早く、ドラマティックになるわけで・・・それは致し方なし。自転車、川遊び、アイスクリーム...既視感あるけどこれが欧州王道の夏休み、そして青春なのねー

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転校生は魅力的且つ飄々としているのがセオリーですかね。

この転校生ニコラスがセクシーでド直球にぐいぐい迫ってくるのでフィルはそこに飲み込まれていくのですが、今作は2016年製作にしては登場人物が皆とてもオープン。フィルはデートに誘われて興奮して眠れない!明日は行けるとこまで行っちゃって良いの?とかママに明け透けに相談するし、同性婚している叔母さんとそのパートナーも協力的、ママの最新ボーイフレンドもフィルを否定したりしない。

でも恋はあくまでフィルとニコラスの二者間にあるもので、周りがフィルのセクシャリティを全肯定していることと恋の成就は残念ながら結びつかない。

サイドストーリーのひとつは進歩的で奔放なママのこれまでとこれからの人生。ママだけは兄妹の父親が誰なのかの当たりをつけているけれど、そこに戻るつもりもふたりに教えるつもりもない。その代わりにこれまでのボーイフレンドには当たり前のようにふたりへの父親ポジションも担わせてきた。

もうひとつは双子の妹ダイアンとの間に芽生えた距離。分身のように育ってきたのに、毎夜部屋を抜け出している彼女とは会話も無い。特にママとの確執が深まっているのは何故なのか。自分のことに忙しいフィルだったから、事態を把握しきれない。

このふたつはやがて絡み合っていることが分かるのだけど、分かったところで過去は取り戻せない。フィルが彼女たちに出来ることは何なのか?

 

この辺りのエピソードの書き込み方が無暗にミステリー風に勿体付けてたのとか、ニコラスのキャラとか、フィルの初恋の思い出とか、思わせぶりに映る嵐の跡とか、ちょいちょいいろんな伏線を出したり、かと思えばそのくせ投げっぱなしで回収しなかったり、映画の軸が弱くなってた感はどうにも否めないのですが、原作が周知されてると、映像化の時に出来る限りエピソードを全部書き込みたくなるのかも?ワタシ的にはちょっとフィルの世界の中心探しより物語の中心探しになってしまった。原作は原作で、映画は映画で大胆に料理して良いのでは?面白ければ別物でも良いです(個人の感想です)。

とはいえ、気弱でウロウロしていたフィルが恋とその喪失をきっかけにキッパリ前を向いて進むラストはとても好ましかった。

 

 

おまけ

相手がチートでさっくり失恋した時のあの「ものすごく損した感じ」の「損」は何に対して芽生えるんでしょうね?信頼した自分の気持ち?共有した時間?(尚この考察にはお金は含まないものとする)