Not Yet ~あの映画の公開はいつですか?~

主に国内未公開&未発売の映画の話など

小舟はただ、束の間たゆたうためだけに「A Moment In The Reeds」

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Amazon U.K.からいわゆるクィア映画のディスクを買っているので、フィンランド発のこの映画もずっとおすすめに上がってきていました。周囲に観た方も増えてきたところで、やや遅ればせながらの鑑賞です。「北欧の『God's Own Country』」なんて紹介されている記事も見ましたよ。ほう。

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ストーリーはここからまんまでお借りします。

cineequal.org

In A MOMENT IN THE REEDS, having moved to Paris for university, Leevi returns to his native Finland for the summer to help his estranged father renovate the family lake house so it can be sold. Tareq, a recent asylum seeker from Syria, has been hired to help with the work, and when Leevi’s father must return to town on business, the two young men fall in love and spend a few days discovering one another during the Finnish midsummer.

(拙訳ですみません)

レーヴィは進学の為パリに住むが、その夏は、疎遠な父親が湖畔の別荘を売却の為に修繕するのを手伝うため故郷のフィンランドに帰省する。そこにシリア難民のターレクが手伝いとして雇われる。レーヴィの父親は仕事で街に戻らねばならなくなる。ふたりの若者は真夏のフィンランドで恋に落ちて・・・

ん?

fall in love 

彼ら、恋に落ちてましたかね?

and spend a few days discovering one another

数日、お互いを「discover」・・・ん~これは「見出す」よりは「楽しむ」と訳すべき感じでしょうか。

 

遅い遅い北欧の夕暮れ。出逢ったばかりの男がふたり。お目付け役のお父さんは急用で街に戻り、今日は戻れないと言う。

湖畔のコテージのフィンランドサウナに入り、湖に飛び込み、タオルいっちょでデッキチェアーでビールの呑みながら身の上話をする。

「ガールフレンドは?」

レーヴィからのありふれた質問。ターレクの分かり易いはぐらかし。美しい夕暮れに流れる微妙な空気。

ふたりは情熱的にセックスをする。それはセックスの為のセックス。

翌日、お父さんは一旦戻ってくる。ひとつしか使われていないベッド。たくさんのビールの空き缶を訝しむ。

けれど、また夜はふたりきりに。

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以下ネタバレ感想です。

鑑賞後のワタシ

「まぁ、そりゃそうなるわな」

以上。

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・・・いえ、もう少々書きます。

男ふたりがそこにいた時に、何かを感じ、身体を重ねる。その先は望まない。望めないのではないけれど、その努力をしない。お互いのために何か出来ることがあるかもしれなけれど、踏み込まない。

登場人物は他にお父さんと元ご近所さんのおばさまだけ。

お父さんとレーヴィの確執も”よくある話”を超えるものではなく。お父さんがちょっと狂言回し的役割で、その心情がレーヴィとターレクのそれより露出する構造になっていたのに、特に膨らまなかったなぁ。

レーヴィが学ぶランボーの話、ターレクが出てきたシリアの話。それも深められなかった。ふたりはひたすらに今目の前にいるお互いを表層的に見て、触れて、欲情して、恋に似た気持ちを楽しみ、短い夜をひたすらセックスに費やす、だけだったような・・・。

 

Twitterでこの作品を観た方が「どの出逢いも運命的な訳じゃない」と仰っていて、膝打ち。

そう、総ての出逢いにそんな強度があるわけじゃない。「これからどうしよう」が必ず芽生えるわけじゃない。

それは男女でも、男同士でも、女同士でも、今この瞬間にもどこかで生まれては消えてゆく、はかないはかない「モメント」。

これはフィンランドの美しい風景の中にあった「モメント」、そのきらめきの映画。

 

ふたりが泥水に浸かっていた小舟を綺麗にして、湖に浮かべて静かに会話するシーンがとても素敵だったけれど、そこは湖。ふたりは川のような流れに乗ることも、大海に漕ぎ出でることも出来ない。

ãa moment in the reedsãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

ただ日暮れまでの束の間たゆたうためだけに小舟はあり、ふたりはそこにいた。